オープンソース・ソフト Drupal を使った Web サイトの構築・サポート・研修

フリダクション:摩擦をなくそうとするインターネットの勢いは止まらない

Friduction

これまで何度も目にしてきた顕著なトレンドがある。それは、ユーザー体験とビジネス モデルにおける「摩擦(friction)」を軽減しようとする、インターネットの継続的な流れだ。

90 年代初期に商業的なスタートを切って以来、インターネットは、不必要な仲介業者を排除することによって、確立されていた秩序を崩し、成功を収めてきた。書店、写真店、旅行代理店、株式ブローカー、銀行の窓口業務、レコード店は、そういった、オンラインの同等なサービスに取って代わられた仲介業のごく一部に過ぎない。オンラインで、本を買う、写真をプリントする、フライトを予約するといった行為は、行列に並ばなくてはいけない、あるいはカスタマー サービス担当者と話すために待たされる、といった、顧客の感じる「摩擦」(ストレス)を軽減してくれる。

僕は、この進化を「中抜き」であるとか何かを奪い去るものとして否定的にとらえるよりは、インターネットが絶え間なく顧客体験を改善しているのを認識することの方に価値があると考えている。すなわち、インターネットはシステムから摩擦を減らしているということだ。このプロセスを僕は「フリダクション(friduction = friction reduction)」と呼んでいる。

オープンソースとクラウド

僕は過去 15 年間にわたって、オープンソースとクラウドコンピューティング ソリューションがテクノロジーに対する旧来のアプローチから摩擦を取り除くのを目にしてきた。オープンソースはテクノロジーの評価および普及プロセスから摩擦を取り去ってくれる。デモ版をダウンロードさせられることもないし、営業と購入のプロセスを通る必要もない。商用ライセンスの制限に引っかかることもない。クラウド コンピューティングが普及したのもフリダクションがあるからだ。クラウドの場合、(利用する)企業は自分が使った分だけ払えばいい。先払いで高額な資産投資をしなくてもいいのだ。そして、市場にスピード対応もできる。

クロスチャンネル体験

Drupal の「API ファースト」イニシアチブは、僕が 2016 年にいちばん多く話したり書いたりしたトピックの1つだ。それには理由がある。このイニシアチブは Drupal が「ページを超えて」進んでいけるようにする。非効率性を排除して従来型 Web サイトのユーザー体験を改善する、さまざまなユーザー エンゲージメント システムと Drupal を統合できるようにするのだ。

僕たちは Web サイトがクロスチャンネル体験へと進化している世界へと急速に向かっている。そこにはプッシュ型通知、対話型 UI などが含まれる。チャットボットおよび音声アシスタントといった対話型 UI が普及していくと思われるのは、それらが顧客体験を改善し、再定義する(顧客体験の概念を変えてしまう)からだ。

パーソナライゼーションとコンテクスチュアライゼーション

90 年代には、パーソナライゼーションとは、認証されたユーザーに対して Web サイトが名前で呼びかけられるくらいの意味だった。Web サイトに初めて自分の名前が表示されたときはワクワクしたことを覚えている。そんな 90 年代から、パーソナライゼーション戦略が長い道のりを歩んできたのは明らかだ。今日、Web サイトはユーザーの直近の行動に基づいて「おすすめ」を表示するし、消費者は自分向けにピッタリとあつらえられた体験を与えてくれることを期待する。パーソナライゼーションとコンテクスチュアライゼーション(状況に合わせた情報提供)をより高度にしようとする流れは決して止まらないだろう。それは、ユーザー体験から摩擦を取り去ることにはあまりにも大きな価値があるからだ。商取引 Web サイトが過去の行動に基づいてみんなの好きなものを予測できたら、それは買い物のプロセスから摩擦をなくすことになる。カスタマー サポートの Web サイトなら、みんなが次に質問することを予測できれば、よりよい顧客体験を提供することが可能になる。これはユーザーにとってだけでなく、ビジネスにとっても役立つことだ。よりよいユーザー体験は、結果として、売り上げの増加、顧客保持率の改善、ブランド露出(外から見たブランドのイメージ)の向上になるからだ。

ユーザー体験が進化しているのと歩調を合わせるため、これからのデジタル体験は、より個別にあつらえられ、予測的でさえもある顧客体験を提供する必要が出てくるだろう。このため、組織(企業)は、きめ細かい(調節がされた)ユーザー コンテンツを作るため、ロケーション データ、従来からの(時間軸に沿った)クリックストリーム データ、あるいはウェアラブル機器からの情報など、いくつものソースからのデータをたっぷりと利用する必要が出てくる。データは、予測的な分析とパーソナライゼーション サービスの土台になるだろう。データ駆動型の戦略と結びつけてユーザー プライバシー(対策)を進めることは、パーソナライズされた体験を拡大するうえで重要な要素になるだろう。データ駆動型の体験は、いずれは「標準」になるだろうと僕は信じている。

Acquia 社では、Acquia Lift というプロダクトのリリースを通じて 2014 年からコンテクスチュアライゼーションとパーソナライゼーションへの投資を始めた。Acquia Lift は年々、普及が進んでいるので、今後も進んでいくだろうと僕たちは見ている。コンテクスチュアライゼーションとパーソナライゼーションは特に、エンゲージメント、ビッグデータ、IoT、機械学習といった、それぞれのさまざまなシステムが成熟し、結合し、すばらしいユーザー体験の定義とはどうあるべきかという点(概念形成)に大きなインパクトを与え始めるにつれて、いっそう浸透していくことだろう。パーソナライゼーション、コンテクスチュアライゼーションといったトレンドが前期追随者(the early majority)にすっかり普及するまでには、あと数年ほどかかるかもしれないが、僕たちは辛抱強い投資家であり、プロダクト制作者だ。Acquia Lift のようなシステムは決定的な重要性を帯びてくるだろうし、全体を統制して最適なカスタマー ジャーニーを導き出した者が賞を勝ち取ることだろう。

結論

Web の歴史を見るかぎり、摩擦がより少ないソリューションは、顧客体験から非効率な要素を排除してくれるので、それ以前のソリューションを凌駕(りょうが)する。フリダクションは長期的なトレンドだ。Web サイト、IoT、AR(拡張現実)、VR(仮想現実)、対話型 UI はどれも成長し続けていくだろう。それは、そうしたものがすべて、より摩擦の少ないデジタル体験を制作させてくれるからだ。